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古代ケルト人は輸入ワインや地ビールで宴会していたとの研究論文が発表

ミュンヘンのルートヴィヒ・マクシミリアン大学(Ludwig-Maximilians-Universitaet (LMU) )とテュービンゲン大学(University of Tübingen)の研究者による合同チームの研究で、古代ケルト人の飲酒と食生活が明らかにされた。

Archaeology -- what the Celts drank
A new study sheds light on the beverages favored by the Celts in Iron Age Central Europe, and reveals what else was on their menu some 2,500 years ago.
モン・ラソワ(Mont Lassois)

モン・ラソワ(Mont Lassois)
Wikimedia commons より 著作権Claude PIARD [CC BY-SA 4.0]

研究チームはハルシュタット文化期を代表する「ヴィクスの女王」遺跡でも知られるフランス・ブルゴーニュ地方モン・ラソワで発掘された紀元前500年頃のギリシアから輸入された陶器や青銅製の容器を含む、陶製の飲用容器や貯蔵・輸送用の瓶99個を分析した。

その結果、「オリーブオイル、牛乳、輸入ワインと地元のアルコール飲料に特徴的な成分,およびキビと蜂蜜の痕跡を同定した。」また「これらの発見は、ワインに加えて、キビや大麦から醸造されたビールが祝祭日に消費されることを示している。」という。

「前四世紀のワイン注ぎ(フラゴン)」(大英博物館像)

「前四世紀のワイン注ぎ(フラゴン)」(大英博物館像)

「この時期は、ギリシアやイタリアの船が初めてアルプス以北に大量に到達した激変期であった。これは一般的に、ケルト人が地中海の生活様式を模倣し始め、エリートだけが宴会で地中海のワインを飲む立場にあったことを示していると考えられている。」と、LMUのプロジェクトを率いた考古学者のフィリップ・ストックハンマー(Philipp Stockhammer)氏は述べている。

「分析の結果、彼らは確かに輸入ワインを飲んでいたが、ギリシア製の飲用容器で地元産ビールも飲んでいたことが確認された。言い換えれば、ケルト人は外国の伝統をそのまま受け入れたわけではない。その代わり、彼らは輸入された容器や製品を独自の方法で、独自の目的のために使った。さらに、輸入ワインの消費は社会の上層部に限定されていなかったようだ。職人たちもワインを手に入れることができ、証拠は彼らが料理にワインを使った可能性を示唆しているが、エリートたちは宴会の間にワインをがぶがぶ飲んだ。異文化間の接触が動的な過程であることを示し、不慣れな容器が新しい機能を果たし,新しい意味を獲得することがいかに容易であるかを示した。」

論文はオンラインジャーナルPLOS ONEで公開されている。

New insights into Early Celtic consumption practices: Organic residue analyses of local and imported pottery from Vix-Mont Lassois
The rich Mediterranean imports found in Early Celtic princely sites (7th-5th cent. BC) in Southwestern Germany, Switzerland and Eastern France have long been th...

同論文のAbstractの訳
「ドイツ南西部、スイス、フランス東部の初期ケルト人の豪華な遺跡(紀元前7~5世紀)で発見された地中海からの豊富な輸入品は、昔から考古学や公共の関心の的であった。古代ケルト人の生活では、特に饗宴の背景として消費習慣が大きな役割を果たしており、輸入された陶製の器は、結果的にエリート層による地中海ワインの宴会を模倣したものと解釈されている。ここでは、初期ケルト地域の重要な場所であるヴィクス(Vix)‐モン・ラソワ(Mont Lassois)からの99個の容器の有機残留物分析を通して、初期のケルト中央ヨーロッパにおける地中海からの輸入品の使用と、それらの地元の陶磁器の対応物を明らかにするために行われた最初の科学的研究を紹介する。地中海からの輸入では、輸入された植物油とブドウ酒が確認され、これらの外国船の占有を示す証拠が示された。ブドウ酒や他の植物性発酵飲料を飲むために供されるギリシアと地元の商品、多種多様な動植物副産物(例えば、脂肪、オイル、蝋、樹脂)も同定された。統合的アプローチを用いて初期ケルト人の飲酒実践における蜂蜜、キビおよびバクテリオホパノイド(bacteriohopanoid)飲料の重要性を示した。生体材料変換に関連した活動を強調し、消費慣行や飲料加工における遺跡内および状態に関連した違いを示す。」

Abstract
The rich Mediterranean imports found in Early Celtic princely sites (7th-5th cent. BC) in Southwestern Germany, Switzerland and Eastern France have long been the focus of archaeological and public interest. Consumption practices, particularly in the context of feasting, played a major role in Early Celtic life and imported ceramic vessels have consequently been interpreted as an attempt by the elite to imitate Mediterranean wine feasting. Here we present the first scientific study carried out to elucidate the use of Mediterranean imports in Early Celtic Central Europe and their local ceramic counterparts through organic residue analyses of 99 vessels from Vix-Mont Lassois, a key Early Celtic site. In the Mediterranean imports we identified imported plant oils and grape wine, and evidence points towards appropriation of these foreign vessels. Both Greek and local wares served for drinking grape wine and other plant-based fermented beverage(s). A wide variety of animal and plant by-products (e.g. fats, oils, waxes, resin) were also identified. Using an integrative approach, we show the importance of beehive products, millet and bacteriohopanoid beverage(s) in Early Celtic drinking practices. We highlight activities related to biomaterial transformation and show intra-site and status-related differences in consumption practices and/or beverage processing.

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キーワード

「ヴィクスの女王」

1953年、フランス・ブルゴーニュ地方モン・ラソワの町ヴィクスで発見された前600年頃の墓で、年齢三十代半ば~四十歳前後の女性が安置されていた。黄金の冠をかぶり、首飾りや腕輪などを身につけ、ギリシア産の容器、エトルリア産のテーブルセットやワイン壺、アッティカ産の杯など多くの副葬品とともに葬られており、当時の高貴な人物であったと考えられている。ハルシュタット文化期後期(前800~前450年頃)を代表する遺跡のひとつ。

「ハルシュタット文化」

ハルシュタット文化は、オーストリアを中心とする青銅器時代後期の前1200年頃から鉄器時代初期の終わり頃となる前450年頃まで続いた古代ヨーロッパ文化。オーストリア西部ザルツブルクの東南ハルシュタット一帯で発見された多くの出土品にちなむ。ハルシュタットなどオーストリア周辺を中核に、ドイツ南部からフランス東部一帯のドナウ川水源地帯を中心とした西文化圏と、東欧・バルカン半島に至る東文化圏に分けられ、地中海方面との交易で栄えた。特にハルシュタットで産出した岩塩や農産物を輸出し、ワインなど贅沢品を輸入することで富を集積した。

古代ヨーロッパの鉄器時代とケルト人(大陸ケルト)の盛衰
青銅器時代から鉄器時代へ ヨーロッパにおける青銅器時代のはじまりは、地中海地域で前3000年頃、アルプス以北ではまず前3000年から前2000年にかけて銅器時代があり、前2300年から前1800年頃にかけての時期に青銅器時代に移行した。ま...

参考記事・文献

Archaeology — what the Celts drank
New insights into Early Celtic consumption practices: Organic residue analyses of local and imported pottery from Vix-Mont Lassois
・木村 正俊 編著『ケルトを知るための65章 (エリア・スタディーズ162)』(明石書店 2018年)
・鶴岡 真弓/松村 一男 著『図説 ケルトの歴史: 文化・美術・神話をよむ (ふくろうの本/世界の歴史)』(河出書房新社,2017年)

Kousyou

「Call of History ー歴史の呼び声ー」管理者。個人ブログはKousyoublog。英独仏関係史、欧州中世史、近世日本社会史、鎌倉幕府史などに興味があります。

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