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2019年7月、アントニオ・サリエリ作品スカラ座へ凱旋、伝統のオペラ対決へ

世界有数のオペラ・バレエ劇場として名高いミラノ・スカラ座で2019年7月6日よりアントニオ・サリエリ作曲のオペラ「はじめは音楽、次に言葉” Prima la Musica e Poi le Parole”」が上演される。今回、異例のジャコモ・プッチーニ作曲「ジャンニ・スキッキ” Gianni Schicchi”」との連続上演という形式となる。

スカラ座はサリエリと縁が深く、1778年8月3日のスカラ座落成時の上演第一作がサリエリの代表作「見知られたエウローパ” L’Europa riconosciuta”」であった。また2004年の大規模改装後の再開第一作も同作が上演されている。

アントニオ・サリエリ

アントニオ・サリエリ肖像画(ウィリブロード・ヨーゼフ・マーラー作)

アントニオ・サリエリ(1750年生~1825年没)は神聖ローマ皇帝の宮廷楽長を務めた十八世紀古典派を代表する音楽家で喜劇オペラの名手として知られた。しかし、根も葉もないモーツァルト殺害の風評と、死後のモーツァルトへの評価の上昇から、後に才能あふれるモーツァルトに嫉妬する凡人サリエリという構図でアレクサンドル・プーシキンの戯曲「モーツァルトとサリエリ」(1830)、ピーター・シェーファーの戯曲「アマデウス」(1979)および同作を原案としたミロシュ・フォアマン監督「アマデウス」(1984)などで描かれ、汚名を着せられることになった。

忘れられた音楽家サリエリは生誕250年となる2000年前後から再評価の機運が高まり、近年、チェチーリア・バルトリやディアナ・ダムラウなど著名なオペラ歌手がサリエリのアリアを録音した。(注1)

New York Timesでのインタビューで、ディレクターのグリシャ・アサガロフ氏は「はじめは音楽、次に言葉” Prima la Musica e Poi le Parole”」を今回スカラ座で上演する理由は芸術監督ペレイラ氏の長年の野望だったという。「ペレイラはこの古い曲をとても気に入っていて、 『ジャンニ・スキッキ』 を使った方がいいと思っている」とアサガロフ氏は説明した。(注1)

サリエリとプッチーニという別の作曲家の作品二つを続けて上演する理由は本作「はじめは音楽、次に言葉” Prima la Musica e Poi le Parole”」の歴史が背景にある。

シェーンブルン宮殿

シェーンブルン宮殿
(パブリックドメイン画像)

1786年1月、神聖ローマ皇帝ヨーゼフ2世は二人の作曲家に一か月後にシェーンブルン宮殿オランジェリーで上演する一幕物の短い喜劇オペラ作品を作るよう命じた。一人がアントニオ・サリエリ、もう一人がウォルフガング・アマデウス・モーツァルトである。短い製作期間で両者とも見事に作り上げて見せる。2月7日の祝宴当日、まずはモーツァルトの「劇場支配人” Der Schauspieldirektor”」、続いてサリエリの本作「はじめは音楽、次に言葉” Prima la Musica e Poi le Parole”」が上演された。(注2)両者の対決の結果について、水谷 彰良 著『サリエーリ 生涯と作品 モーツァルトに消された宮廷楽長』では以下のように評している。

『音楽だけを聴き比べれば多くの者がモーツァルトに軍配を挙げるに違いない。歌手に要求される技巧は明らかに<劇場支配人>が勝ち、音楽の勢いの点でもそうだ。それでもオペラとしては明らかにサリエーリ作品の方が面白い。<劇場支配人>には序曲と四つの楽曲しかなく、台本も<はじめに音楽、次に言葉>の方が良く書けているからである。』(注3)

皇帝ヨーゼフ2世はその日の報酬をサリエリに100ドゥカート、モーツァルトに50ドゥカートとした。

サリエリとモーツァルトの対決は上記の商品リンク先で試聴できる。

その伝統的な対決の新しい相手に選ばれたジャコモ・プッチーニ作曲「ジャンニ・スキッキ” Gianni Schicchi”」はプッチーニの代表作として知られる未完の「トゥーランドット」を除くと完結した最後の作品で、ダンテ・アリギエーリの「神曲」を原案にした「外套」「修道女アンジェリカ」に続くプッチーニ三部作の三作目にあたる。今回、2008~09年にロサンゼルス・オペラで同作のオペラ監督を務めた映画監督ウッディ・アレンが引き続き監督を務める。

New York Timesでのインタビューで、グリシャ・アサガロフ監督は伝説的な映画監督に挑むのは大変ですか?と問われ「勿論です」と答えたあと続けて「この作品は印象的ではなく『ジャンニ・スキッキ』 のように知られているような作品ではないため、難しい」「この作品から何かを作るのは私にとって挑戦です」「面白くて魅力的なものにしなければなりません」と語っている。(注1)

2019年7月6日、伝統のオペラ対決が最高峰の舞台で行われる。

公演日
2019年7月6日、8日、10日、15日、17日、19日、21日

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脚注

注1)Mozart’s Rival Returns to La Scala in a Double Bill With Puccini(New York Times June 19, 2019)

注2)水谷 彰良 著『サリエーリ 生涯と作品 モーツァルトに消された宮廷楽長』122~123頁

注3)水谷 彰良 著『サリエーリ 生涯と作品 モーツァルトに消された宮廷楽長』125頁

参考文献・リンク

Mozart’s Rival Returns to La Scala in a Double Bill With Puccini(New York Times June 19, 2019)
PRIMA LA MUSICA E POI LE PAROLE / GIANNI SCHICCHI (スカラ座作品上演ページ(英語))
スカラ座公式ページ(英語)
ミラノ、スカラ座 2019公演情報 | イタリア政府観光局
・水谷 彰良 著『サリエーリ 生涯と作品 モーツァルトに消された宮廷楽長

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