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シベリア、ダムの湖底から年に一度浮上する遺跡で約2000年前の女性のミイラが発見

「シベリアのアトランティス」アラテイ遺跡

「シベリアのアトランティス」アラテイ遺跡
©IHMC RAS/The Siberian Times

ロシア連邦シベリア連邦管区に属するモンゴル国と国境を接する山岳地帯の国トゥヴァ共和国にあるサヤノシュシェンスカヤ(Sayano-Shushenskaya)ダムの周辺は、青銅器時代からチンギス・カンのモンゴル時代まで多くの遺跡が集まる。

このダムの貯水池サヤン(Sayan)湖にあるアラテイ(Ala-Tey)遺跡、通称「シベリアのアトランティス(Siberian Atlantis)」は、普段通常水深15メートルの水中にあって毎年水位が下がる五月中旬から六月末の間だけ浮上する貴重な古代の遊牧民の埋葬地で110以上の墓が発見されており、毎年、この短い間に考古学調査チームが急ぎ発掘作業を行っている。この遺跡で、2018年、「眠れる美女」と名付けられた約2000年前の女性のミイラ化した遺骸が発見され、その詳細を2019年6月21日付The Siberian Timesが報じている。

Race against time and waves as Russian archaeologists rescue Siberia’s remarkable Atlantis
Sensational underwater treasures - including mummies of Hun-era fashionistas - recaptured from oblivion.

ただし、各紙フン族(Huns)の女性として報じているが、歴史上確実なフン族の登場は四世紀で少し時期が遡ることになる点やアラテイ遺跡は匈奴文化に関係が深いとされている点を考慮すると、フン族と断じてよいか疑問もある。ニュース中に登場するキルノフスカヤ博士も、論文では同遺跡が匈奴文化に関わりがある(related to the Xiongnu culture)と書いているので、ニュース化される際にわかりやすさを重視してコメントが匈奴(Xiongnu)ではなくフン(Huns)に変えられているのかもしれない。ニュース記事は「匈奴」を指して「フン」と呼んでいるようにもみえるので、狭義の、四世紀に登場して西漸しヨーロッパを脅かした「フン族」ではない可能性がある。

1983年にダムが建設されて水没したが、今回幸運だったのは、水中にあったことで遺跡に堆積していた何層もの土が洗い流されて石櫃の存在が明らかにされたこと、石の蓋でしっかりと密閉されて遺骸が保護されていたこと、そして盗掘に遭わなかったことだったという。

発見された革製品デザイナー「眠れる美女」のミイラ

発見された革製品デザイナー「眠れる美女」のミイラ
©IHMC RAS/The Siberian Times

発見された若い女性の骨はシルクのスカートに黒玉の宝石の原石のバックルをつけたビーズのベルトをつけて横たわっていた。傍らに葬式用の食事と松の実の袋が用意され、その中でも最も凝った作りの袋には中国製の鏡が入っていた。また、ベルトを飾るために使われたターコイズビーズ、ずっと小さな紫色のビーズのセット、銅合金で作られたベルトリングの破片、美しい彫刻が施された骨製のベルトバックルがあった。その他の埋葬物として中国漢代の絹、鏡、銭貨もあった。

発見されたバックル

発見されたバックル
©IHMC RAS/The Siberian Times

「発見された鏡を復元したもの」©IHMC RAS/The Siberian Times

「発見された鏡を復元したもの」©IHMC RAS/The Siberian Times

当初調査チームは彼女の副葬品の豪華さから巫女と考えていたが、研究の結果、彼女は革製品のデザイナーで、革や糸など作業道具とともに埋葬されたと考えられている。

彼女の近くにもう一人、木製の紡錘とともに袋に詰められたミイラが発見され、このミイラは織工と考えられている。

調査チームを率いたサンクトペテルブルク大学物質文化史研究所(Institute for the History of Material Culture)のマリナ・キルノフスカヤ博士(Dr Marina Kilunovskaya)は「皮、糸、紡錘の破片などとともに発見された2体のミイラは、フン族社会で特別な役割を果たしていた可能性がある」という。彼女らの社会は「母系制ではなかったが、女性や母親、職人は尊敬されていた」。また、遊牧民にとって「ベルトは彼らの衣服の中で重要な部分であり、富や社会的地位を表していた」。

サヤン湖上のアラテイ遺跡とは別に、サヤン湖の沿岸にはテレジン遺跡という少なくとも32か所にのぼる遊牧民の墓があり、今回の調査でトラとドラゴンが戦う様子を描いたバックルや、美しいブロンズの雄牛、馬、ラクダ、ヘビなどが新たに見つかっている。ロシア・トゥデイ誌はこれを匈奴のものと報じている。

アラテイ、テレジン両遺跡はともに匈奴文化と深いかかわりがあると考えられており、2016年までに両遺跡から50基の墓が発見され、埋葬物としてベルトや衣服の装飾、ビーズ、ペンダント、イヤリング、中国の五銖銭、前漢の鏡とその破片などが多数発見されている。またテレジン遺跡からは強化骨弓と鏃(やじり)も発見されていた。(Marina Kilunovskaya,” Archaeological discoveries in Tuva: excavations of the Ala-Tey and Terezin cemeteries of the Xiongnu period in 2015–2016”,2018)

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参考記事・論文

Race against time and waves as Russian archaeologists rescue Siberia’s remarkable Atlantis
‘Russian Atlantis’ where women were revered unearthed in Siberia (PHOTOS) — RT Russia News
Astonishing ‘Russian Atlantis’ rises from depths of Siberian waters
・Marina Kilunovskaya,” Archaeological discoveries in Tuva: excavations of the Ala-Tey and Terezin cemeteries of the Xiongnu period in 2015–2016”,2018

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