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中世スコットランド独立の英雄王を描く映画”Robert the Bruce”を巡る騒動

Robert The Bruce

“Robert The Bruce”(2019)
© Signature Entertainment

予告編

あらすじ
1306年のスコットランド。ロバート・ザ・ブルースは自ら王に戴冠し、スコットランドの自由への大望を抱いていた。しかし、敗北を繰り返して軍は散り散りになり、スコットランドの貴族にも見捨てられて負傷した彼は、小さな農村に匿われる。村の若い未亡人と子供たちの看病によって死の淵から生還し、正しいことをするという決意を鼓舞して復讐ではなく自由の為に再び立ち上がる。(注1)

ロバート・ザ・ブルースことスコットランド王ロバート1世(在位1306~1329)はスコットランド王国独立の英雄として知られる。スコットランドの名門貴族ブルース家の出身で、イングランド王エドワード1世によるスコットランド併合(1296年)に抵抗してウィリアム・ウォレス(1270頃~1305)らとともに独立戦争を指揮し、1306年にスコットランド王に即位した。即位直後は敗北を重ねてハイランド地方へ退却したが、1307年に再起してイングランドに対しゲリラ戦を展開、1314年、バノックバーンの戦いによってイングランド軍に決定的勝利を収め、1320年、「アーブロース宣言」を採択してスコットランド王国の独立を宣言した。(注2)

この時代を扱った作品として有名なのがメル・ギブソン主演の「ブレイブハート」(1995年)だが、「ブレイブハート」でもロバート・ザ・ブルースを演じたアンガス・マクファーデンが24年ぶりに再びロバート・ザ・ブルースを演じることで注目が集まっている。

2019年6月28日に全英で公開されたが、評価はまずまずといったところのようで、The Guardianは★3/5で映像や音楽を称賛しつつ「スコットランドでの観客をみつけるべきで、ブレイブハートのような国際的成功は望めないだろう」と若干辛口なのに対し、The HeraldScotlandも★3だが「この映画は、根気と理想への信念、そして最後まで何かのために戦うことについての映画だ」と好意的に評価している。(注3)

内容からもわかる通り、英国でのブレグジットへの対応を巡ってスコットランドで独立の可否を巡る国民投票が行われるなどの現在の世情を強く意識しているようで、脚本にも参加した主演のマクファーデン氏は熱烈なスコットランド独立支持者でも知られ、「この映画がスコットランド独立の支持を高めることを望んでいる」と述べているという。(注4)

本作を巡っては、英国最大の映画館チェーンCIBEWORLD社が「商業上の理由」から本作の上映を見送ると発表したことに対し、SNS上でマクファーデン氏らを中心に上映を求める署名運動が起こり、アレックス・サモンド元スコットランド自治政府首相や俳優のティム・ロビンス氏らもこれを支持して、同社は最終的に判断を撤回して上映を行うことになったという事件も報じられた。(注4)

ロバート・ザ・ブルースはその歴史的な事跡から、スコットランド独立の機運が高まる現在、強く意識されている人物のようで、先日も、エディンバラ城の新城主(総督)にロバート・ザ・ブルースの子孫で軍人のアラステア・ブルース将軍が就任したことが発表されている。(注5)

歴史上の人物や事件とそれを描く物語が、それに触れる現代の人々にとってどのような意味を持つのか、そこにどのような意味を見出そうとするのか、改めて考えさせられる騒動となっている。

個人的に好きな時代・人物ではあるので見てみたいが、日本公開は未定のようだ。

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脚注

注1)ROBERT THE BRUCE – UK TRAILER

注2)ヘンリー・R・ロイン編(魚住昌良監訳)『西洋中世史事典』(東洋書林,1999年,原著1989年)575-576頁「ロバート1世ブルース」の項よりまとめ

注3)Robert the Bruce review – rousing return of the king of the Scots / Is this the new Braveheart? Film review: Robert The Bruce

注4)Cinema chain bows to pressure from Scottish nationalists to show new Robert the Bruce film

注5)BBC News – New Edinburgh Castle governor is Robert the Bruce descendant

1707年グレート・ブリテン連合王国成立に至るスコットランド・イングランド対立の歴史
スコットランド王国成立前史 およそ八世紀頃までにスコットランドには主に五つの民族が定住するようになった。ピクト人、スコット人、アングル人、古代ブリトン人、ノース人である。他にもノルウェー人やデンマーク人なども移住してきており、それぞれ複数...
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