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『中世ヨーロッパのレシピ』コストマリー事務局, 繻鳳花 著

中世ヨーロッパでは人々はどのようなものを食べていたのだろうか?大まかにアウトラインだけみるなら、中世前期(5~10世紀)については史料が少ないがキリスト教の布教にともないローマ時代からの地中海世界の伝統的な食文化と在地のゲルマン人たちの伝統的な食文化が融合して「パンとワイン」が根付いていっていた。中世盛期(11~13世紀)になると人口増加と農耕技術の向上で農業生産が増大して、特に小麦やライ麦の生産量が上がり、パン食が一般的になる。中世後期(14~15世紀)までに、農業生産が頭打ちになり飢饉なども頻発する一方で、肉食が増え、香辛料が多く輸入されて食事に「色」が重視され、食の多様化が見られるようになる。特に上流階級では色鮮やかで豪華でバリエーションのある「食文化」が花開いた。(山辺規子「第11章 融合する食文化」(堀越宏一・甚野尚志編著『15のテーマで学ぶ中世ヨーロッパ史』(ミネルヴァ書房,2013年))参照)

本書は、当時の食事をアレンジして現代で実際に作ってみることができるように配慮されたレシピ集だ。それぞれの食事の歴史と主に食べられていた地域、食材、作り方まで写真付きでガイドしてあり、見るだけでもとても楽しい。もちろん、実際に作ってみたらもっと楽しそうだ――まだ作っていないが今度この中から何か作って食べてみよう。

「中世ヨーロッパのレシピ」

「中世ヨーロッパのレシピ」30-31頁
amazon商品ページの画像より

本書によれば、当時の調味料としてよく使われていたのが「スパイス、塩、ビネガー、ハチミツ」で、スパイスの中でも「クローブ・シナモン、ジンジャー」が中世三大スパイスだとされる。これとあわせてオリーブオイル、魚醤、砂糖、そしてアーモンドミルクなどが挙げられている。

ところで、ブリュノ・ロリウー著(吉田春美訳)『中世ヨーロッパ 食の生活史』(原書房,2003年)によれば、中世の料理書に良く登場して中世の西ヨーロッパ世界全域でよく知られていたカムリーヌソースも、これらの組み合わせを基本として作られる。カムリーヌソースの味付けには時代差・地域差が大きくて作り方も色々だが、特徴だけ大まかにいうと、イングランドやイタリアは甘味が強く、フランスは酸味が強かったらしい。

その点を踏まえて、本書を参考にして作った中世料理に、砂糖で甘味多めにしたら中世イタリア風、シナモンなどスパイスで甘味多めにしたら中世イングランド風、ビネガーなどで酸味多めにしたら中世フランス風などといったアレンジを加えてみると面白いかもしれない。

中世ヨーロッパ舞台の映画やドラマの宮廷饗宴シーンでお馴染みの豚の丸焼き「王に捧げる、いとも豪華な捧げもの」の作り方もばっちり紹介されている――丸焼きの中に鳩を生きたまま詰めて切ると飛び立つようにする方法は勿論書かれていないが――人生でも一度は食べてみたい料理の一つではある。

中世ヨーロッパ風料理を実際に作って楽しむことができる内容になっており、中世の食文化を実際に家庭で楽しみたい人におすすめの一冊だ。

著者の繻鳳花様よりご恵投いただきました。ありがとうございました。

本書の目次

COLUMN 中世ヨーロッパ料理は現代の調味料で代用できる!
COLUMN 中世レシピに登場する香辛料・ハーブ

麗しき貴族の食事 ~料理指南 序之段~
◦ヒポクラテスの袖
◦中世風サラダ
◦クミンのスープ
◦ヒポクラテス・ソース
◦アスパラガスのサラダ
◦コッド(タラ)
◦ファンゲス
◦レンズ豆と鶏肉の煮込み
◦小鳥の墓
◦ホロホロ鶏の蒸し煮
◦ミンチ肉のやわらか煮
◦サーモンパイ
◦バレンタイン祭の「ケーキ」
◦ショートブレッド
◦エンバーデイ・タルト
COLUMN 中世ヨーロッパと西洋ファンタジーの食事情比較

白き宝石は魅惑の甘さ ~料理指南 二之段~
◦ワンパウンドケーキ
◦レモンケーキ
◦ケルトスタイルのショートブレッド
◦ポーカランス
◦ワッフル
◦レモンのフリッター
◦クリッピー
◦スノー&スノートッピング
◦ファインケーキ
◦サンボケード
COLUMN 癒しの薬草と中世の食

果実の恵みは後世と共に ~料理指南 三之段~
◦アップルムース
◦ラムズ・ウール
◦リンゴのタルト
◦ロイヤルパイクラスト
◦アニスとリンゴのタルト
◦チキンソテー・オレンジソース添え
◦ストロベリーポタージュ
◦ベリーのタルト
◦洋ナシのワインシロップ
◦洋ナシのコンフォート
COLUMN 貴婦人のそばに美しき花々あり

神と共に生き、神と共に食する ~中世前期の修道院料理~
◦家庭用または修道院のパン
◦お肉のボール
◦枝豆のフリッター

騎士が運びし文化の流入 ~中世アラブ料理~
◦バリダ
◦王様好みのソテー

王族の戴冠式メニュー
◦王に捧げる、いとも豪華な捧げもの
◦マジパンの装飾菓子
◦金のリンゴ
COLUMN 実録・華麗なる失敗作
COLUMN イギリス・中世祭体験記

付録 アウラの回顧録

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参考文献

・山辺規子「第11章 融合する食文化」(堀越宏一・甚野尚志編著『15のテーマで学ぶ中世ヨーロッパ史』(ミネルヴァ書房,2013年))
・ブリュノ・ロリウー著(吉田春美訳)『中世ヨーロッパ 食の生活史』(原書房,2003年)

Kousyou

「Call of History ー歴史の呼び声ー」管理者。個人ブログはKousyoublog。英独仏関係史、欧州中世史、近世日本社会史、鎌倉幕府史などに興味があります。

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