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世界文化遺産に「ブルキナファソの鉄冶金遺跡群」「バビロン」が登録

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2019年7月5日よりアゼルバイジャンで開催中の国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)世界遺産委員会は、世界文化遺産として「ブルキナファソの鉄冶金遺跡群(Ancient Ferrous Metallurgy Sites of Burkina Faso)」(ブルキナファソ)、「バビロン(Babylon)」(イラク)の登録を発表した。

「ブルキナファソの鉄冶金遺跡群」(ブルキナファソ)
『この遺跡は、国の異なる地域にある五つの場所で構成されている。この施設には、約15基の自然通風炉、その他いくつかの炉構造物、鉱山、住居跡がある。ドゥルラ( Douroula)は紀元前8世紀にさかのぼるもので、ブルキナファソで発見された鉄生産の発達に関する最も古い証拠である。この地域の他の構成要素であるティウェガ(Tiwega)、ヤマネ(Yamane)、キンディボ(Kindibo)、ベクイ(Bekuy)は、紀元前2千年紀(紀元前2000~前1000年)の間に鉄の生産が強化されたことを示している。鉄鉱石の還元―-鉱石から鉄を得ること―-は現在行われていないが、村の鍛冶屋はさまざまな儀式に参加しながら、道具を供給する主要な役割を果たしている。』

「バビロン」(イラク)
『バクダッドの南85kmに位置し、資産には紀元前626年から539年の間に新バビロニア帝国の首都であった都市の遺跡が含まれている。古代都市周辺の村や農業地域を含む。その遺跡、都市の内外の壁、門、宮殿、寺院は、古代世界で最も影響力のある帝国の一つに対する独特の証言である。ハンムラビやネブカドネザルのような支配者の下にあった歴代の帝国の所在地であるバビロンは、最盛期の新バビロニア帝国の創造性を表現している。古代世界の七不思議の一つである空中庭園との関連もまた、芸術的、大衆的、宗教的文化を世界的規模で刺激している。』

(”UNESCO World Heritage Centre – Five sites inscribed on UNESCO’s World Heritage List Friday, 5 July 2019“より日本語訳)

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「ブルキナファソの鉄冶金遺跡群」

CNN AFRICA 「ブルキナファソの鉄冶金遺跡群」写真

The ancient ferrous metallurgy site in Burkina Faso is among the 2019 nominees for UNESCO's list of World Heritage Sites https://cnn.it/2X61oaF

CNN Africaさんの投稿 2019年6月25日火曜日

紀元前1000年紀、サハラ砂漠以南のアフリカでは銅器・青銅器の使用を経ずに石器から鉄器への移行が起こった。鉄器の使用により森林を開拓することが容易となり農耕文化が栄え、鉄器を使用した農耕民は中央アフリカから南アフリカへと移動、拡散することになった。鉄器時代への移行は紀元前5世紀以前のことで、ナイル河谷のメロエを中心とした北アフリカ一帯とナイジェリア北部のノク文化を中心とした西アフリカ一帯がその中心地とされている。

紀元前8世紀に遡り、現在発見されている中で最古となる自然通風炉が、今回、世界文化遺産に登録された「ブルキナファソの鉄冶金遺跡群」である。

「バビロン」

「バビロン」

「バビロン」
(wikimedia commonsよりパブリックドメイン画像)

バビロンは紀元前二千年頃、アッカド王朝・ウル第3王朝時代に始まると伝わる古代都市で、ハンムラビ王以降の古バビロニア王国の首都として栄えた後カッシート王朝、新アッシリア王国などの支配を受けた。しかし、この時代の遺跡はほとんど残っておらず、現在発見されている遺跡は紀元前1000年紀、新バビロニア王国時代(前626~前539年)以降のものである。ネブカドネザル2世(前605年~562年)治世下でイシュタル門や城壁、マルドゥク神殿、ジッグラトなど多くの建造物が造られた。ただし空中庭園の存在は明らかではない。

ペルシア帝国、マケドニア、パルティアの支配を経て一世紀末頃に衰退して廃墟となった後砂漠に埋もれていたが、十九世紀に発見され、イラク王国、イラク共和国、フセイン政権下で保護された。2003年から始まったイラク戦争でアメリカ軍とポーランド軍が基地を築くため遺跡を一部破壊するという事件があって両軍は厳しく批判されたが、2005年、イラク政府に引き渡されて修復された。

世界の七不思議に挙げられる「空中庭園」や伝説の「バベルの塔」をはじめとして聖書や伝承・物語にも多く登場して西アジアからヨーロッパにかけての文化に大きな影響を及ぼしている。

その他登録された自然遺産・複合遺産

この他、2019年7月5日時点ではフランス海外植民地の「フランス領南方・南極地域」から南インド洋の諸島をまとめた「フランス南方の陸と海(French Austral Lands and Seas)」と、アイスランドの「ヴァトナヨークトル国立公園 – 火と氷の活発な自然(Vatnajökull National Park – dynamic nature of fire and ice)」の二つが自然遺産として、ブラジルの「パラチーとグランデ島 – 文化と生物多様性(Paraty and Ilha Grande – Culture and Biodiversity)」が複合遺産として登録された。

以後、2019年7月10日まで登録審査が続けられる。

参考文献・リンク

UNESCO adds five sites to World Heritage List, including Babylon
BBC News – Ancient city of Babylon designated Unesco World Heritage Site
Ancient city of Babylon heads list of new Unesco world heritage sites
・大貫 良夫 , 前川 和也 , 渡辺 和子 , 屋形 禎亮 著『世界の歴史1 人類の起源と古代オリエント(中公文庫)』(中央公論新社,2000年,原著1998年)
・ベアトリス・アンドレ=サルヴィニ著(斉藤かぐみ 訳)『バビロン (文庫クセジュ) 』(白水社,2005年)
・宮本 正興 , 松田 素二 編『改訂新版 新書アフリカ史 (講談社現代新書)』(講談社, 2018年)

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