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トルコ、アンタキヤで発見された1500年前の世界最大の床モザイクが一般公開へ

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トルコ南東部ハタイ県の県都アンタキヤ(旧アンティオキア)で2010年に発見された世界最大の広さを持つ六世紀頃の床モザイクが9年間の調査を終えて元の場所に戻され一般公開される。トルコのメディアAnadolu Agency(トルコ語記事英語記事)他各ニュースサイトが報じている。

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発見された世界最大の床モザイク

「アンタキヤの床モザイク」

「アンタキヤの床モザイク」
© Anadolu Agency

この床モザイクは、2010年、アンタキヤで現在のアンタキヤ・ミュージアム・ホテル(Antakya Museum Hotel)建設中に発見されたもので、広さ約1200平方メートル、一枚地の床モザイクとしては世界最大となる。製作時期は六世紀前半、「表面が凹凸のある曲線を描いているのが特徴で、526年から528年にかけて発生した地震でアーチ状になっている」と、ハタイ考古学博物館(トルコ語” Hatay Arkeoloji Müzesi ” , 英語”Hatay Archaeology Museum”)のヤスティ館長は語る。

ホテル建設中にこの床モザイクが発見されると、考古学者たちによって発掘、ハタイ考古学博物館に運び込まれて9年かけて調査が行われた。途中発掘現場からは他の歴史的遺物も発見されて同じく博物館に運ばれたという。

発見後、ホテルは考古学者と建築家との協力でミュージアムホテルとして再設計され、ホテルの地下にはこの「公共空間”public space”」と名付けられた世界最大の床モザイクや多くの歴史的遺物が展示されることになる。ヤスティ館長はこの床モザイクが「トルコだけでなく世界でも最も素晴らしい歴史的遺物であることを証明した」と語っている。

古都アンティオキア

モザイクが発見されたアンタキヤ――かつてのアンティオキアの歴史は古く、アレクサンドロス大王の武将で大王死後セレウコス朝を開いたセレウコス1世が、紀元前300年、ディアドコイ戦争最大の会戦イプソスの戦いに勝利した際に築かれ、父アンティオコスの名にちなんで名づけられた。以後セレウコス朝の首都として栄え、セレウコス朝滅亡後はローマ帝国の有力都市の一つとなった。

キリスト教の国教化以後、ローマ、コンスタンティノープル、アレクサンドリア、エルサレムと並んで五大司教座としてシリアの政治・宗教・文化の中心都市となった。第一次十字軍(1096~1099)後はアンティオキア公国が築かれ、シリアにおけるヨーロッパの対イスラーム戦争の拠点となったが、1268年、マムルーク朝によって征服され、その後、1516年にオスマン帝国が占領、1939年以降、トルコ共和国へ編入されて現在へ至る。

ビザンツ帝国で花開いたモザイク美術

モザイクとは、色のついたガラスや大理石、その他の材料を組み合わせて文様や絵をつくり接着剤で土台に固定する技法で、古くはシュメール時代に類似のものが見られるが、本格的な登場はローマ帝国時代である。一世紀頃、天然セメントと粉砕した大理石やテラコッタ、石灰などを混ぜ合わせた「コッチョペスト」が発明されると、床装飾が一般的に見られるようになる。これが後に「オプス・ウェルミラクトゥム(虫食形モザイク)」という技法に発展、ローマ時代の別荘や公共空間の床に多く用いられて床モザイクが一般的に作られた。

特に床モザイクが多く作られたのが1世紀から6世紀のアンティオキアで、この時期にアンティオキアで制作された床モザイクの特徴は『ガラスの小片と色大理石とが、一つの絵画構図の全面に一緒に用いられている』(「モザイク」(佐々木英也 著『オックスフォード西洋美術事典』(講談社, 1989年)1122-1127頁))という。

東西分裂後、西ヨーロッパではモザイクの技法は一時絶えたが、ビザンツ帝国では大きく発展して、547年、イタリア・ラヴェンナに建てられた聖ヴィターレ聖堂の「皇帝ユスティニアヌスのモザイク」やラヴェンナ郊外に建てられた549年の聖アポリナーレ・イン・クラッセ聖堂のモザイク、聖アポリナーレ・ヌオーヴォ聖堂の三隻の帆船のモザイク、八世紀後半に建てられた聖ソフィア大聖堂のドームのモザイクなどが名高い。後に九世紀から十世紀にかけて西ヨーロッパにも再輸入されて、キリスト教美術の代表的な作品が多く生み出された。

参考文献・リンク

Turkey: Massive intact mosaic to go on show
Dünyanın tek parça en büyük taban mozaiği görücüye hazırlanıyor
EAA-Emre Arolat Architecture » Antakya Museum Hotel
World’s largest mosaic opens to the public this year
Turkey to open ‘world’s largest’ intact mosaic this year
・「モザイク」(佐々木英也 著『オックスフォード西洋美術事典』(講談社, 1989年)1122-1127頁)
・根津由喜夫 著『図説 ビザンツ帝国—刻印された千年の記憶 (ふくろうの本/世界の歴史) 』(河出書房新社,2011年)
・ジョン・ラウデン 著(益田 朋幸 訳)『初期キリスト教美術・ビザンティン美術 (岩波 世界の美術) 』(岩波書店,2000年)

Kousyou

「Call of History - 歴史の呼び声 -」主宰者。世界史全般、主に中世英仏関係史や近世の欧州・日本の社会史に興味があります。

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