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トルコで約2500年前の古代ペルシア帝国の郵便局跡やゾロアスター教の聖域が発見

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オルズ・ヒュユク遺跡発掘写真

オルズ・ヒュユク遺跡発掘写真
© Hürriyet Daily News

トルコ共和国の黒海沿岸アマスィヤ(”Amasya”)県トクルジャク(” Toklucak”)村にあるオルズ・ヒュユク(” Oluz Höyük”,” Oluz Mound”)遺跡で約2500年前、ペルシア帝国時代の郵便局跡とみられる遺跡が発見された。

アマスィヤから25キロメートル離れたオルズ・ヒュユク遺跡は1999年に発見され、2007年の調査開始以降今年2019年で13期目となる。2019年7月24日から開始された調査ではイスタンブール大学など五大学で5人の研究者、3人の考古学者、15人のインターン考古学・建築学者と学生らが参加して発掘調査が行われている。

同遺跡からはこれまで土塁を持つ10の集落が発見され、アナトリア半島の銅器時代にあたる紀元前4500~4000年頃からヘレニズム時代の終わりとなる紀元前100年ごろまで連続して居住地として利用されてきたことが確認されている。

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古代ペルシア帝国の郵便局

今年の発掘調査で120平方メートルに及ぶ建物の構造が発見され、これが郵便局ではないかと研究者は考えている。発掘を指揮しているイスタンブール大学考古学科シェフケット・デンメズ教授(” Professor Şevket Dönmez”)は以下のように述べている。

「毎年我々はここでとても重要な考古学的発見をする。この地域はとても重要だ。2010年以来、ペルシア層と建築の研究が行われてきた。この場所の重要性は、ここに来て独自の建築物を建てるペルシア人の基礎から来ている。ここに火の寺院を建て、寺院を中心に街を発展させた。火の寺院の隣に聖域があり、寺院に続く石造りの道と、西に円柱のホールがあり、我々は直近2年間そこで働いてきた。この円柱のホールは、ペルシア時代のアナトリア考古学で初めて発掘された建造物だ。他の時代にも円柱のホールがあるが、5世紀にはとても重要な建物だ。この円柱のホールには6つの石の土台がある。木の柱があるだろう。記念碑的な建物だ。この建物が寺院の隣にあるということは、この建物の機能を考えさせる。例えば、集合場所や郵便センターなどだ」

デンメズ教授はこれが郵便局であったとしたら、この場所の前でメッセンジャーと馬が待っていたという。「チャパル” çapar”と呼ばれるメッセンジャーたちがこの郵便局で待っていた。ここでは疲れた馬や使者が交換され、夏や冬、昼夜を問わず郵便物が運ばれていた」

「(ペルシア帝国は)ギリシアから中央アジア、エジプトに至る広大な帝国を持ち、知事を介して帝国を統治した。どういうわけか、彼らは正しいニュースと情報を首都から周辺に送り、国境に至る所までさまざまな道路網を確立しなければならなかった」とデンメズ教授は言う。

オルズ・ヒュユク遺跡発掘写真

オルズ・ヒュユク遺跡発掘写真
© Enes Sansar – Anadolu Ajansı

メディア王国に従属していたペルシア王国はキュロス2世(在位:前559年~前530年)の治世下でメディア王国から独立、バビロンを征服して新バビロニア王国を滅ぼすなど勢力を拡大し、内紛を経てペルシア王なったダレイオス1世(在位:前522年~前486年)の治世下でイラン、アナトリア半島、メソポタミア、エジプトに至る大帝国アカイメネス(ハカ―マニシュ)朝ペルシア帝国を築いた。

ダレイオス1世は内政を整備して帝国を20の行政区に分割、サトラップ(知事)を派遣して統治した。帝都スーサからアナトリア半島の中心都市サルディスに至る幹線道路「王の道」を築き、キュロス2世時代に誕生した「チャパル・カーネ” Chapar Khaneh”」と呼ばれる郵便・情報伝達制度を全国に拡大整備して迅速なコミュニケーションを図ったことで知られている。

アナトリア半島でのゾロアスター教信仰への転換

もう一つの注目点はゾロアスター教の「火の寺院」と聖域の発見である。火を崇拝する寺院が発見されたことは、ゾロアスター教がアナトリアにも存在していたことを示唆している。

ゾロアスター教は紀元前1500年~前1000年頃にイランのザラスシュトラが創始した最高神アフラ・マズダーを信仰する一神教で、六世紀頃までにイランに広がった。世界は光明を司る善神アフラ・マズダーと闇の世界を支配する悪神アンラ・マンユとの闘争として説かれ、火はアフラ・マズダーの象徴として神聖視された。ペルシア王家も代々ゾロアスター教を信仰してゾロアスター教の神官(マグ)を厚遇し、ペルセポリスなど各地に火の寺院を建てている。

デンメズ教授によれば、アナトリアや小アジアにおける多神教から一神教への転換期がオルズ・ヒュユクで始まったことを示す証拠を得ており、教授は宗教考古学の観点からも極めて重要であることを強調した。

「ここに住む共同体が、火を崇拝する新しい宗教を形成したと考えられる。この時代までアナトリアはギリシアの神々とフリギア時代の両方の影響下で多神教を信じていた。この時代に初めて全ての神が集まり、人々が1つの神を崇拝するようになったことがわかる」

参考文献・記事

・永田雄三 編『西アジア史〈2〉イラン・トルコ (新版 世界各国史)』(山川出版社,2002年)
・P・R・ハーツ 著(奥西峻介 翻訳)『ゾロアスター教 (シリーズ 世界の宗教)』(青土社,2004年)
・阿部拓児 著『ペルシア帝国と小アジア: ヘレニズム以前の社会と文化』(京都大学学術出版会,2015年)

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Kousyou

「Call of History - 歴史の呼び声 -」主宰者。世界史全般、主に中世英仏関係史や近世の欧州・日本の社会史に興味があります。

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