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九世紀頃のアングロ・サクソン少女の頭蓋骨、皮剥ぎ・鼻削ぎ刑が加えられていたことが判明

分析された八~九世紀頃のアングロ・サクソン人少女の頭蓋骨。

分析された八~九世紀頃のアングロ・サクソン人少女の頭蓋骨。
© Garrard Cole, Antiquity Publications Ltd., 2020

イングランド南部で1960年代に発見された八~九世紀頃のアングロ・サクソン系の人骨を調査していた考古学者たちが、アングロ・サクソン時代の法典類に記載されている皮剥ぎ・鼻削ぎ刑の古い例となる痕跡を発見した。CNNが報じている他、詳しくは、調査にあたったユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London, UCL)考古学研究所(Institute of Archaeology)のギャラード・コール(Garrard Cole)氏らがジャーナル” Antiquity”で調査結果についてサマリーを公開している。

Garrard Cole, Peter W. Ditchfield, Katharina Dulias, Ceiridwen J. Edwards, Andrew Reynolds, Tony Waldron ” Summary justice or the King’s will? The first case of formal facial mutilation from Anglo-Saxon England”(Antiquity, Volume 94, Issue 377 October 2020 , pp. 1263-1277)

1960年代にイングランド南部の町ベイシングストーク(Basingstoke)で発見された十五~十八歳の少女のものとみられるアングロ・サクソン人の頭蓋骨を分析した結果、この頭蓋骨は放射性炭素年代測定で西暦776~899年の間のもので、鼻と唇を切り落とされており、罰の一環として頭皮を剥がされていた可能性もあることが判明した。また、遺骨は治癒した形跡が見られないことから、彼女は傷を負った直後に死亡したと考えられている。

前掲のギャラード・コール氏らの論文によればアングロ・サクソン時代の法典では身体の切断や頭皮を剥ぐ刑罰があることが多く記録に残されている。ウェセックス王イネ(西暦 688-725年)の法典では窃盗に対する手の切断刑があり、アルフレッド王(西暦871-899年)やアゼルスタン王(西暦924-939年)の法典でも同様に姦淫や貨幣鋳造などの罪で切断刑が規定されている。またエドマンド1世王(西暦939-946年)の法令では窃盗をした奴隷への刑罰として頭皮剥ぎと小指の切断刑が定められている(Cole 2020)。

切断刑は殺すためではなく、むしろ屈辱を与え、あるいは身体を不自由にさせることを目的としており、死刑にするほどではない犯罪に対する罰として行われてきた。切断には、手足の切断の他、耳、鼻など顔の一部を切断することがあり、いくつかの文化では、鼻の切除は女性の美しさを破壊するため女性だけのものとされていた (Cole 2020)。

また、彼女は通常の墓地には埋葬されず、隔離された場所に埋葬されていたとみられ、あわせて追放刑が科せられていた可能性があるという。イングランドにおける通常の共同墓地から隔離して境界に埋葬する慣習は六~七世紀ごろから始まり、大規模な処刑者用墓地の登場は七世紀後半から八世紀頃で、これらはキリスト教の布教と関係があるとみられている。

『この慣習は社会から追放された者の適切な埋葬地としての境界的な場所という既存の観念を部分的に利用したものだが、後に景観設定の中で実現された「善」と「悪」というキリスト教の二元的な観念として認識された。』

“This practice drew partly upon extant notions of liminal places as suitable repositories for social outcasts, but recognising the Christian binary notions of ‘good’ and ‘evil’ that were subsequently realised in a landscape setting.” (Cole 2020)

同様の事例は十世紀頃の記録にあるものであったため、今回の発見はそれより一世紀ほどさかのぼることになり、ブリテン島で行われた顔面の部位に対する切除刑の最初期の例として考古学的に非常に重要な発見と考えられている。

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ニュースソース

An Anglo-Saxon girl had her nose and lips cut off as punishment, skull shows – CNN

Skull reveals Anglo-Saxon teen’s nose and lips were cut off 1,100 years ago | Live Science

Garrard Cole, Peter W. Ditchfield, Katharina Dulias, Ceiridwen J. Edwards, Andrew Reynolds, Tony Waldron ” Summary justice or the King’s will? The first case of formal facial mutilation from Anglo-Saxon England”(Antiquity, Volume 94, Issue 377 October 2020 , pp. 1263-1277)

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