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オーディンら北欧神話の神々を祀ったノルウェー最古となる八世紀頃の神殿が発見

「オーディンのイラスト」(ラディック・ピーチ画)

「オーディンのイラスト」(ラディック・ピーチ画、”Murray, Alexander (1874). Manual of Mythology “、パブリックドメイン画像)

ノルウェーで八世紀頃の北欧神話の神々を祀った神殿「神の家(ノルウェー語” gudehov ” , 英語”godhouse”)」が発見された。調査にあたったベルゲン大学博物館(ノルウェー語”Universitetsmuseet i Bergen” , 英語”University Museum of Bergen”)によると、ノルウェーで発見された同様の神殿としては最古の例となるという。

ノルウェー西部の主要都市オシュタ(Ørsta)に近いオーサ(Ose)村で宅地開発の準備のための発掘調査を行ったところ、約2000~2500年前の農村の跡と八世紀頃の神殿の遺構が発見された。遺構は、長さ約45フィート(14メートル)、幅26フィート(8メートル)で、構造から高さは最大40フィート(12メートル)に及ぶと推測されている。

ベルゲン大学博物館によるオーサ村の「神の家」3D復元映像

この神殿は「神の家」と呼ばれるオーディンやトール、フレイヤなど北欧神話の主な神々を祀る神殿であったと見られ、夏至や冬至の際に儀式が行われていた。調査にあたったベルゲン大学博物館の考古学者ソーン・ディインホフ(Søren Diinhoff)氏によると、このような大規模神殿建築は北欧では六世紀頃に登場したもので、スカンディナヴィア半島より南のキリスト教世界の教会建築を取り入れたものと見られている。ディインホフ氏によると「北欧の宗教的な崇拝はよりイデオロギー的に組織化され、オーサの神の家は南の土地で旅行者が見たキリスト教のバシリカを模したものだった」(Live Scienceより)と言う。

神話の神々への崇拝は古くから行われていたが、スカンディナヴィア半島の社会がローマ帝国やヨーロッパ北部のゲルマン人諸部族の階層化された社会と交流するようになったことで、他のスカンディナヴィア社会同様オーサ村でも富裕層に権力の集中が起こった。アトラス・オブスキュラ紙へのインタビューでディインホフ氏は「新たに生まれた権力者たちは、信仰だけでなく、社会的な影響力を示すものとして、『神の家』に資金を供給し、組織する役割を担っていたのかもしれない」「このようにして富裕層と彼らの『荘園』は社会のイデオロギーを支配するようになった」と語っている。

「ノルウェーで発見された八世紀の神殿の遺構」 © University Museum of Bergen

「ノルウェーで発見された八世紀の神殿の遺構」
© University Museum of Bergen

神殿の近くからは神殿が建てられるより以前から使われていた炊事場と動物の骨、宗教的儀式に使われた円形のエリアと伝統的なロングハウス二棟の跡も発見された。炊事場と円形のエリアを併せてホルグ(hørg)と呼ばれている。また、近くには1928年に発見された男性器の形をした石像もあり、これらはオーディン、トール、フレイアなど神々に対して肉を調理して捧げ豊穣の祈りが行われていた跡と考えられている。「彼らは機嫌よくたくさん飲んで食べていただろう」「彼らは楽しい時間を過ごしていただろう」とディインホフ氏はいう。

北欧ではキリスト教の布教が進展した十一世紀頃から、旧来の信仰に基づく「神の家」は相次いで破壊されていくことになったが、このオーサ村の神殿が他の神殿同様の時期に壊されたかどうかはまだわかっていない。

今後、遺跡保存のため祭祀場周辺が緑地として整備される予定。

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ニュースソース

Enestående funn av hedensk gudehov fra yngre jernalder | Universitetsmuseet i Bergen“(ベルゲン大学博物館プレスリリース、ノルウェー語記事)

Found: An Old Norse ‘Godhouse’ Fit for Thor and Odin“(Atlas Obscura)

1,200-year-old pagan temple to Thor and Odin unearthed in Norway“(Live Science)

Ruins of Eighth-Century Pagan Temple Found in Norway“(Smithsonian Magazine)

参考文献

・熊野聰 著/小澤実 解説『ヴァイキングの歴史――実力と友情の社会』(創元社、2017年)
・クロード・ルクトゥ 著(篠田知和基 監訳)『北欧とゲルマンの神話事典:伝承・民話・魔術』(原書房、2019年)
Stone phalluses and ancient fertility cults“(Norwegian SciTech News – Research News from NTNU and Sintef)

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