テューダー朝イングランド王ヘンリー8世を主人公にした歴史大河ドラマ。第一話はイングランドの駐イタリア大使がフランス人の騎士たちに刺殺される事件から始まり、報復のために対仏開戦を唱えるヘンリー8世と彼を取り巻く人々の人間模様が描かれます。
第一話での主な登場人物として、男子に恵まれずヘンリー8世と冷え切った関係に悩む王妃キャサリン・オブ・アラゴン、ヘンリー8世から全幅の信頼を置かれ国政を主導する大法官トマス・ウルジー、ヘンリー8世の師として尊敬を集めるトマス・モア、ヘンリー8世の親友で寵臣の騎士チャールズ・ブランドン、謀叛を画策する名門バッキンガム公エドワード・スタッフォード、フランス大使として才幹を発揮するトマス・ブーリンと二人の娘メアリー・ブーリンとアン・ブーリン、懐妊したことに気付くヘンリー8世の愛妾エリザベス・ブラント、バッキンガム公の謀叛計画に関与せざるを得なくなる貴族ノーフォーク公トマス・ハワードといったところです。
若かりし頃の血気盛んなヘンリー8世と魅力的な登場人物で、それぞれの思惑が交錯するドラマが展開され一話からとても見ごたえがあります。劇中で丁寧に描かれるウルジーやトマス・モアに対するヘンリー8世の厚い信頼が、歴史上の帰結を思い起こさせて胸を熱くさせますね。みな野心家だったり欲求に正直だったりするのも実によいです。バッキンガム公のガバガバでバレバレな謀叛計画はもうフラグとしか思えませんが(笑)
また、機嫌を損ねたら首が飛ぶかもしれない君主への受け答えを皆スムーズにやっているの少し参考になります。臨機応変に空気を読んで「陛下の足元にも及びません」とか言えるようになっておきたいですね。
第一話では歴史上にいう1518年のロンドン条約締結に至る過程が描かれています。作中では対仏開戦を叫ぶヘンリー8世に対するウルジーの融和策として提案されたのがヨーロッパ諸国の相互不可侵条約としてのロンドン条約ですが、歴史上はルター派の台頭とオスマン帝国の侵攻とに対抗してヘンリー8世とウルジーが提唱したものでした。
他、第一話での会話などの元ネタを知っておくとより楽しめると思いますので簡単に紹介。
信仰の擁護者
1521年にヘンリー8世が称することになる英国君主の称号の一つですが、劇中では、フランス王フランソワ1世が自称しながら~としてヘンリー8世が批難しています。
アジャンクールの戦い
1415年、百年戦争後半戦の再開でイングランド王ヘンリー5世がフランス軍に勝利した戦い。劇中では3000の兵で6万のフランス軍を撃破ということになっていますが、兵力の実数としてはイングランド軍約6000~8000、フランス軍3万強となっています。
どのような経緯であれ王は王
テューダー朝は元をたどるとウェールズの有力氏族で、ヘンリー5世の寡婦キャサリン・オブ・ヴァロワ(フランス王シャルル6世の娘)の秘書官となったオウエン・テューダーが彼女と愛人関係となり生まれた子供たちに始まります。ばら戦争期に活躍して台頭、やがてヘンリー・テューダーがランカスター家の傍流(母がランカスター家出身)として伝統的な12世紀以降イングランド王であり続けたプランタジネット家の直系であるランカスター家・ヨーク家に代わりヘンリー7世として王位につきました。
アーサー王子との死別と再婚
フランスに対抗した包囲網を築くため1501年、ヘンリー7世の長男アーサーとスペインのカトリック両王の娘カタリナ(キャサリン)が結婚するが翌1502年、アーサーは病死してしまう。引き続き両国関係の維持のため、次男ヘンリーとの再婚が企図されるが、アーサー王子15歳、キャサリン14歳と若かったことから両者に関係があったかが議論となり、一応関係は無かったと結論されての再婚でした。
バッキンガム公とリチャード3世
バッキンガム公ヘンリー・スタッフォード(劇中のバッキンガム公エドワードの父)はばら戦争期、リチャード3世の即位に貢献して信頼厚い重臣でしたがヘンリー・テューダーの反乱軍が蜂起すると、1483年10月、リチャード3世を裏切って兵を挙げロンドンへ侵攻、しかし、返り討ちにあい斬首されました。この反乱失敗エピソードが劇中ではバッキンガム公エドワードの反乱計画の際に語られています。
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