英国コーンウォール地方にある著名な中世の城跡ティンタジェル城へとアクセスすることができる十三世紀の橋を再現した架橋工事が完了し、2019年8月11日にオープンした。当初七月完成予定だったが工事の遅れから開通が延期(Cornwall Live)されていた。
今回完成したのは本土とティンタジェル城があるティンタジェル島とをつなぐ直線の橋で、海面から高さ57メートルの位置にある。
ティンタジェル城の歴史は古く、5~6世紀にコーンウォール地方を支配したブリトン人によって要塞が造られ、ブリトン人の王国ドゥムノニア王国の王宮の一つが設けられていた要地だった。コーンウォール地方はウェールズ地方とフランス・ブルターニュ地方との間でブリトン人の勢力が栄えたが、後にアングロ・サクソン人によって侵攻を受け、九世紀以降ウェセックス王国、続いてイングランド王国の支配下となった。
アーサー王伝説の舞台としても知られ、十二世紀、ジェフリー・オブ・モンマスによって書かれた初期のアーサー王物語ではアーサー王の父ウーサー・ペンドラゴンがティンタジェル城の城主の妻イグレーヌを見初め、魔術師マーリンの力を借りて篭絡しアーサー王が誕生する。
このアーサー王伝説に傾倒した十三世紀のコーンウォール伯リチャードは廃墟となっていたこの地に改めて中世城塞としてのティンタジェル城を築き、あわせてティンタジェル城へ至る橋が架けられた。リチャード死後、城は再び放置され、十四~十五世紀には廃城となって橋も落ちていたが、その後のアーサー王伝説人気から十九世紀以降現在まで、人気の観光地と化している。
現在、毎年25万人が訪れているが、城跡へと至る経路は崖に切り込まれた急な階段を通り、その下にある小さな木製の橋でつながっていて、アクセス問題を抱えていた。
The Guardian誌によれば、「人々が島に出入りするのはいつも悪夢でした」とイングリッシュ・ヘリテッジ”English Heritage”でコーンウォール地方の歴史的資産を統括するジョージア・バターズ氏は語る。ピーク時には、両側で最大45分の待機時間があり、保護された岬には学生たちや年金受給者たちが定期的に足止めされていた。バターズ氏によると、ティンタジェルの小さな村を訪れた人の約三分の一は、長い列と148段の階段に足を延ばして城を訪れることさえしなかったという。
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— Tintagel Castle (@EHTintagel) August 8, 2019
イングリッシュ・ヘリテッジによる再建3Dイメージ映像
今回築かれた橋は長さ約70メートル、幅2.5メートルで待機時間無くスムーズに遺跡へアクセスすることができる。しかし、写真や動画の通り――ジェフリー・オブ・モンマスはティンタジェル城について「三人で王国の全勢力に対抗できる」と書いたが、さもありなんと思わせる風景だ――高所が苦手な人にはかなり辛そうだが、その場合には従来の崖下から登るルートもある。今回、新たに直線の橋が築かれたことで混雑の緩和が期待されている。
アーサー王伝説ゆかりの聖地として、ブリトン人とアングロ・サクソン人の興亡の舞台として、そして大空位時代に神聖ローマ皇帝位を窺った十三世紀ヨーロッパ史の著名人リチャード・オブ・コーンウォールの居城として、様々な観点からぜひ訪れたい城の一つではないだろうか。