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世界史ニュース

「マーロウ・ウォーロード」と呼ばれるアングロ・サクソン人有力者の墓が発見

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「マーロウ・ウォーロード"Marlow Warlord"」と呼ばれる六世紀の男性の遺骨

「マーロウ・ウォーロード”Marlow Warlord”」と呼ばれる六世紀の男性の遺骨
© University of Reading

イングランド南東部バークシャーにあるテムズ川中流域の町マーロウの丘陵地で六世紀頃のアングロ・サクソン人有力者の墓が発見された。調査にあたったレディング大学がプレスリリースで発表し、The Gurdian他各紙で報じられている。

発見された墓には装飾された鞘と鉄製の剣、および青銅製のボウルやガラス製の容器、衣類の金具、槍の穂先など多くの副葬品とともに身長6フィート(約1.8メートル)の男性の遺骨が埋まっていた。Live Scienceによると、当時のイングランドの男性の平均的な身長が5.7フィート(約1.7メートル)であったといい、平均的な身長よりかなり高い。研究者はこの遺骨の人物を発見された地名にちなんで「マーロウ・ウォーロード(Marlow Warlord,注1)」と呼んでいる。


今回の発見についてWho was the ‘Marlow Warlord’?(「マーロウ・ウォーロード」とは何者だったか)と題したレディング大学ガボール・トーマス博士の解説動画(英語)

調査にあたったレディング大学のガボール・トーマス博士は「この男は、当時の他の男性に比べて背が高くがっしりしていただろうし、現代でも堂々とした人物だっただろう」「彼がテムズ川を見渡せる場所に埋葬されている点は、彼が現地の部族の尊敬される指導者であり、おそらく彼自身が強力な戦士だったであろうことを示唆している」とプレスリリースで述べている。

青銅製のボウルはベルギーやフランスなど大陸から輸入されたもので、大陸との交流を示し、ガラス製の容器はローマ時代に一般的に使われていたがアングロ・サクソン時代の墓の埋葬品としては珍しいものであるという。これらの特徴から墓は六世紀頃と推測されている。

また、Live Scienceによると、鞘の鞘尻(charp)の金具は、馬に乗っている鞘の着用者に歩いていた戦士がぶつかってついたかもしれない切り傷があったため、装飾品ではなく実際に戦闘で使われていたものである可能性が高い。

マーロウ・ウォーロードの墓から出土した副葬品の鉄製の剣<br />© University of Reading

マーロウ・ウォーロードの墓から出土した副葬品の鉄製の剣
© University of Reading

“The region of the mid-Thames between London and Oxford was previously thought to be a ‘borderland’ in this region, with powerful tribal groups on each side. This new discovery suggests that the area may have hosted important groups of its own. It is likely that the area was later squeezed out or absorbed into the larger neighbouring proto-kingdoms of Kent, Wessex and Mercia.”(Anglo-Saxon warlord found by detectorists could redraw map of post-Roman Britain)

(ロンドンとオックスフォードの間にあるテムズ川中流域は、以前はこの地域の「国境地帯」と考えられており、それぞれの側に強力な部族集団が存在していた。今回の新たな発見は、この地域に独自の重要な集団が存在していた可能性を示唆している。この地域は、後にケント、ウェセックス、マーシアなどより大きな隣接する初期王国に押し出されたり、吸収されたりした可能性が高い。)

今後、クラウドファンディング等を利用してさらなる研究資金を調達の上で、レディング大学考古学部で発見された埋蔵物や人骨の調査研究が進められる予定となっている。

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ニュースソース

Anglo-Saxon warlord found by detectorists could redraw map of post-Roman Britain“(University of Reading)

Archaeologists unearth remains believed to be of Anglo-Saxon warlord | Science | The Guardian

Anglo-Saxon warlord unearthed by metal detector hobbyists | Live Science

脚注

注1)”Warlord”は地方の武装集団のリーダー、群雄割拠した国の将軍、戦時下で特定の地域を実効支配する独立勢力(軍閥)の指導者などを指し、武将、戦国大名、将軍、司令官などと訳されるが、六世紀ブリテン島という背景を考慮して武将・戦国大名のような中近世日本を想起させる訳や、他の近代軍事組織的な表記、部族の長(Tribal chief)であるとも限らないので族長などの言い回しも避け「ウォーロード」とカタカナ表記をした。

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