イングランド南東部、ロンドンとオックスフォードの間にあるバッキンガムシャー州の村ストーク・マンデヴィルの中世の教会跡で石材に刻まれた悪霊を祓うためのものとみられる「魔女の印(‘witches’ marks)」と呼ばれる文様が見つかった。
イングランドを縦断してヨーロッパ大陸と直結させる高速鉄道”High Speed 2(HS2)” 敷設計画のルートに予定されているストーク・マンデヴィル村にある中世の教会「聖メアリ教会」の跡地で考古学者らによる工事準備のための発掘調査が行われた。
ストーク・マンデヴィル村の聖メアリ教会はノルマン・コンクエスト直後の1070年頃に作られた礼拝堂に始まり、その後増築され、1340年代には回廊も追加された。初期は現地の荘園領主家のための礼拝堂だったが、後に村人のための教会として解放された。1866年、近くに新たな教会が建てられたことで、それまでの教会は取り壊されたが、取り壊しの方法や範囲は記録に残っていなかった。
今回の調査で瓦礫の下に当時の床がそのままの状態で壁が5フィート(約1.5メートル)の高さまで残っていたことが新たに発見され、教会西側の控え壁(buttress)から、中央に穴が開いていて、そこから円を描くように放射状に線が入っている2つの石が発見された。
このような文様の刻印はイングランドでは珍しくなく教会や民家でも見られるが、二つの用途が考えられている。一つは日時計の一種である「スクラッチ・ダイアル(scratch dials)」だが、日時計は設置場所に適した教会の南側にあるのが通常で、今回見つかったものは西側の控え壁の地面近くという配置から日時計としての効果は疑問視されている。
研究者らはこれがもう一つの用途である「魔女の印(‘witches’ marks)」と呼ばれる、悪霊を無限の線や迷路の中に閉じ込めて追い払うために描かれた文様であると考えているが、「魔女の印」のような悪霊祓いの護符として設置されたか、あるいは日時計「スクラッチ・ダイアル」の石を教会の建物の一部として再利用したものであった可能性もある。
調査にあたった考古学者マイケル・コート氏は「このような珍しい印の発見は、その目的や用途についての議論の契機となり、過去への魅力的な考察を提供してくれる」と語っている。
教会の発掘作業は来年以降も進められ、さらに床下にサクソン時代の教会があるかどうかなどを含め詳しい調査が行われる予定。
ニュースソース
“Medieval graffiti associated with repelling evil spirits unearthed by HS2 in Stoke Mandeville“(HS2のプレスリリース)
“HS2 dig at abandoned church finds graffiti linked to warding off evil spirits – BelfastTelegraph.co.uk“(BelfastTelegraph)