イングランド南部ドーセット州にあるシャフツベリー修道院(Shaftesbury Abbey)跡を調査していた考古学者のチームが十四世紀頃の石像の頭部を発見した。イングランド王エドワード2世(在位1307-1327年)のものではないかと見られている。
シャフツベリー修道院は888年、アルフレッド大王の名で知られるウェセックス王アルフレッドによって女性のための修道院として創建され、王女の一人エゼルイヴが初代修道院長となった。以後、ウェストミンスター寺院と並ぶイングランド屈指のキリスト教施設として繁栄したが、1539年、宗教改革を進めるイングランド王ヘンリ8世の命で解散・破壊された。
考古学者ジュリアン・リチャーズ氏が率いる発掘チームは2019年夏からシャフツベリー修道院跡の発掘調査を行い、同修道院の構造を明らかにした他、中世の床タイルやコイン、修道女のロザリオの一部だったとみられる黒色ビーズなどが発見された。
リチャーズ氏によれば、このような発見の中で最も「エキサイティング」だったのが、王冠を被っている石像の頭部が見つかったことだった。頭部は流れるような髪の毛と、宝石を連想させる盛り上がりのある王冠が特徴で、1340年代頃のものとみられている。ガーディアン紙によれば、流れるような髪の毛は女性を、顎のラインは男性を示唆しており、性別は容易に判別できなかった。
イングランド王エドワード2世の可能性が高いと見られているが、リチャーズ氏は「これは間違いなく王家の人物だ。エドワード2世かもしれないが、はっきりとはわからない。サクソン王の様式化された像かもしれないしアルフレッドかもしれない」とガーディアン紙に語っている。
この像は、これまで知られていなかった同修道院の王家の石像のギャラリーの一部を形成していたが、おそらく宗教改革時に破壊されたものとみられている。リチャーズ氏によれば「首が折れており、誰かがハンマーで叩き折ったか、あるいは押し倒された際に鼻が折れたものかもしれない」という。修道院破壊時、石材の多くは市街地の建材へ転用するため持ち去られたが、石像は役に立たないと見られていたようだ。
石像の頭部は引き続き日付の特定など調査が行われ、シャフツベリー修道院の歴史を解き明かすことが期待されている。2020年10月現在、新型コロナウィルス感染拡大の影響で展示は行われていないが、2021年春を目途にシャフツベリー修道院博物館に展示して一般公開できる状態にする目標であるという。
ニュースソース
“King Edward II’s Stone Head Unearthed at British Abbey | Ancient Origins”
“Shaftesbury Abbey: A Voyage of Exploration and Discovery (SAVED) Project:“(“Shaftesbury Abbey Museum and Garden”)