ウェールズ北部アングルシー島にある約5000年前の羨道墳――地下の玄室に向かって細い通路が伸びている形式の墳墓――ブリン・ケスリ・ジ(Bryn Celli Ddu)遺跡の近くで、約4000年前のロック・アート(Rock art,注)が彫られた洞窟が発見された。また陶器や石器が詰まった穴もあわせて見つかったという。
ブリン・ケスリ・ジは「木立の中の小山」を意味する、1928年から1929年にかけて発掘されたウェールズ地方を代表する新石器時代の遺跡。多くの石室墓と異なり、長さ8.4 mの完全な羨道と玄室を備えている。かつては石垣をめぐらした菱形で、夏至を測定する目的であったという説が有力である。
過去五年間、毎年調査が行われており、2018-19年の発掘調査で、ブリン・ケスリ・ジからわずか数メートル離れたところでロック・アートの洞窟、石造物や土器、石器などが発見され、放射性炭素年代測定により紀元前1,900年頃であることが確認された。
火打ち石の道具や大きな石の二重の塊が発見されているが、その中には重さがそれぞれ1トンを超えるものもあり、新たに発見された遺跡はブリン・ケスリ・ジよりも大きい可能性もあるという。
ブリン・ケスリ・ジ遺跡を管理するウェールズ政府歴史環境課(Cadw)は現地の小学校の生徒や子供たちを対象に遺跡への立ち入りを許可し、考古学者によるワークショップや講演を実施。発見された出土品を直接目にすることで、遺跡の歴史をより深く理解してもらうことが期待されている。
文化・観光・スポーツ副大臣(注2)ダヴィズ・エリス=トーマス卿(Lord Dafydd Elis-Thomas)は「我々は、人々をこの国の豊かな遺産に引き込む新しい方法を開発し続けている。ブリン・ケスリ・ジでこの発掘とイベントを主催することは、ウェールズで最も印象的な先史時代の遺跡の一つをより深く理解するための素晴らしい方法だ。地元の人々も観光客も、この夏ブリン・ケスリ・ジを探索し、新たな考古学的成果を発見してほしい」と語っている。
注1)Rock artは自然の石に、多くの場合儀式的な目的で彫られた人為的な印のこと。全世界的に見られ、ヨーロッパでは後期旧石器時代以降登場した。「岩絵」とも訳されるが絵とは限らないため、ここではカタカナでロック・アートとした。
注2)元記事では”Minister for Culture, Tourism and Sport, Lord Dafydd Elis-Thomas”となっているが、ウェールズ議会の名簿によると副大臣(Deputy Minister)。爵位は男爵。