ペルー共和国首都リマの北約150キロメートル、ワウラ郡” Huaura province”にあるヴィチャマ” Vichama”遺跡で約3800年前の人のような顔立ちのヒキガエルと人が描かれた壁画が発見された。ペルー文化省のプレスリリースとあわせてBBC他各メディアが報じている。
「カラル考古学区域(“Caral Archaeological Zone ”,”Zona Arqueológica Caral(ZAC)”)」のディレクター、ルース・シャディ・ソリス博士(”Dr Ruth Shady Solís”)によると「アンデス文明では、ヒキガエルは水を表し、その下の顔は、降雨で生活の継続性が与えられるのを待っている人間を表している」
この壁画は儀式用の公共建造物の壁画で発見された。また、近くで見つかった別の壁画は、4人の人間の頭が蛇に囲まれ、顔のある種子のように見えるものが描かれている。
発見されたヴィチャマ遺跡は紀元前3000年ごろから栄えたカラル文化の中心地のひとつで、カラル文化はこの壁画が書かれた紀元前1800年ごろまでに衰退。また、紀元前1800年は、アンデス文明の形成期早期(紀元前3000年~前1800年)と形成期前期(紀元前1800年~前1200年)の転換期にあたる(大貫良夫2010,26頁)。
研究者たちはこれらの壁画が描かれたのはおそらく飢餓と飢饉の時代だっただろうという。考古学者タチアナ・アバド(” Tatiana Abad”)氏によると『壁画はそこに住む人々にとって「危機」の時間を表している』。シャディ・ソリス博士は、地域の気候の変化を表すヴィチャマの新たな壁画は紀元前1800年頃の文明衰退の理由を示しているかもしれないと言う。
この壁画が作られたのは、乾燥化しつつある地元の気候が地域社会の内部ストレスの一因となっていた時期であり、そのためにヴィチャマの住民は水をテーマとした象形画に注目するようになった。(Archaeology Magazine)
現代人から見るとコミカルさを感じるこれらの絵柄は、描かれた当時の社会が抱えていた諸問題を示し、あるいは文明の転換を象徴しているかもしれない。